秋田魁新報社[2017知事選]産業振興 成長分野で雇用創出を

0 min read

県の人口減対策「あきた未来総合戦略」(2015~19年度)は産業振興を柱の一つに据え、5年間で1万2630人の雇用創出を掲げている。県外への転出者が転入者を上回る「社会減」は、進学や就職する若者を中心に年間4千人を超えており、若者の県内定着が急務となっているためだ。

産業の中でも、県が成長分野として重点的に取り組んでいるのが航空機産業だ。行政の後押しを受けて、県内企業が本格的に参入したのは06年12月。成果は徐々に表れ、15年度の航空機産業の県内生産額は16億9920万円で過去最高となり、07年度の900万円から飛躍的に伸びた。だが、総合戦略の19年度目標額、54億円には遠く及ばない。

工業統計調査によると、本県の14年の製造品出荷額は1兆2149億円で全国43位。東北では7年連続最下位だ。主力の電子部品が出荷額の4分の1を占め、航空機や自動車部品など輸送用機械はわずか5%にとどまっている。

県によると航空機産業は輸送用機械の中でも生産ラインが自動化された自動車産業と違い、人手に頼る部分が多い。熟練した技術も必要で、本県が得意とする電子部品製造や精密機械加工などの応用が利く分野も多いという。中国や東南アジアを中心に航空機への需要は旺盛で、産業としての裾野も広い。

だが、県内企業の生産は厨房(ちゅうぼう)スペースや化粧室の内装品などの組み立て加工が大半という。出荷額を伸ばすには、エンジンや機体の主要部品の受注拡大が不可欠だ。

そのためには、高度な生産設備を導入したり、技術者を養成したりして生産体制をさらに整備する必要がある。企業同士の連携を強化するなど、産業としての集積も急ぎたい。本県ならではの優位性をどう確立できるかが問われている。

秋田労働局によると、県内企業に就職する割合(2月末現在内定分)は高校生が65%なのに対し、県内の大学や短大、専修学校などは45%、大学生に限ると32%にとどまる。理工系の学生が県外に就職する割合が高いためとみられる。

県内の有効求人倍率は1・3倍に迫り高水準が続いているが、理工系学生が求めるような高度な技術職の求人が多いとはいえない状況だ。産学官の連携によって競争力を高めるような技術や製品を開発し、大卒技術者らの受け皿づくりにつなげたい。

一方、既存の産業をどう活性化するかも重要だ。県内の企業倒産件数が低水準で推移する半面、経営者の高齢化などを背景に休廃業・解散の増加が顕著となっている。事業をいかに承継し、今ある雇用を守っていくことができるのか。起業や事業承継を移住・定住者の受け入れとも絡め、積極的に進めていく必要がある。

出典:秋田魁新報社

You May Also Like

More From Author

+ There are no comments

Add yours

CAPTCHA